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マンション管理とペット問題  弁護士のサポートでトラブル解決! 

2025.01.18

マンションでペットに関するトラブルが増加しています。ペット可物件が増えている一方で、鳴き声、糞尿、共用部分でのマナーなど、ペットを飼う人と飼わない人との間で摩擦が生じる場合があり、大きなトラブルとなることを珍しくありません。 

この記事では、マンション管理組合がペット問題を解決するための方法、トラブルを未然に防ぐための対策、そして弁護士によるサポートの活用法について解説します。マンションでのペット問題でお困りの方はぜひご一読ください。 

1 マンションにおけるペットトラブル:現状と課題

近年、核家族化や高齢化の進展、ペットとの共生による癒しの需要増加などを背景に、ペット可マンションが増加しています。しかし、すべての住民がペット飼育に賛同しているわけではなく、むしろルールやマナーに対する意識の差がトラブルの火種となるケースが増えています。 

従来、多くのマンションではペット飼育を禁止していましたが、時代の変化とともにペット可マンションが増加し、現在では多くのマンションでペット飼育を認めています。しかし、この変化が新たな課題を生み出しています。ペットを飼う人、飼わない人の価値観の相違が顕著になり、些細なことが大きなトラブルに発展するリスクが高まっているのです。例えば、鳴き声、糞尿の処理、共用部分でのリードの着用など、日常的なことがトラブルの引き金になりかねません。 

2 ペットトラブルの種類と原因(規約違反、騒音、糞尿など)

マンション内で発生する代表的なペットトラブルとその原因は以下の通りです。 

(1) 規約違反 

ペット飼育禁止マンションでの無断飼育、ペット可マンションでも種類・サイズ規定違反など。管理規約違反は他の住民とのトラブルの大きな原因となります。 

(2) 騒音 

犬の吠え声など、特に早朝や深夜の長時間におよぶ鳴き声は、近隣住民の安眠を妨げ、深刻なストレスを与えます。 

(3) 糞尿の問題など 

共用部分や他人の敷地内での糞尿の放置は、不衛生であり悪臭の原因にもなります。感染症のリスクも高まり、マンション全体の衛生環境を悪化させます。 

これらのトラブルは、住民間の深刻な対立に発展する可能性があるため、マンション管理組合による適切な対応が不可欠です。 

3 ペット飼育規則の整備と運用:トラブル予防の第一歩 

トラブルを未然に防ぐためには、明確で実効性のあるペット飼育規則の整備と運用が重要です。曖昧なルールは解釈の相違を生み、トラブルに繋がります。ペット飼育規則は具体的に記述することで、住民間の共通認識を形成します。具体的には、以下のような規定を設けることが考えられます。 

➀飼育可能なペットの種類とサイズ:犬、猫、鳥など種類を明記し、体長・体重制限、飼育頭数制限も設けます。 

➁共用部分でのルール:共用廊下、エレベーターなどでのリード・ケージ使用の義務付け、糞尿処理方法、他の住民への配慮事項を規定します。 

➂飼育環境の管理: 衛生管理、予防接種、無駄吠え防止対策など、責任あるペット飼育を促すための規定を設けます。 

➃違反時の罰則: 規則違反への罰則(口頭注意、文書警告、罰金など)を段階的に設け、ルール遵守を促します。 

➄登録制度:ペットの種類、頭数、ワクチン接種状況などを管理組合に登録させ、適切な管理体制を構築します。 

4 規約等変更の手続きと注意点 

ペット飼育規則の制定・変更は、区分所有法や管理規約に基づいた手続が必要です。具体的には、規約の制定・変更であれば特別決議、細則の制定・変更であれば普通決議が必要となります。また、規約等の制定変更後は、掲示板掲示、文書配布、ウェブサイト掲載など、複数の方法で全住民に周知する必要があります。 

5 既存の飼育者への配慮と規約変更の際の決議について 

規約等変更により既存のペット飼育者に不利益が生じる場合は、経過措置を設けるなど配慮が必要となる場合があります。 

では、規約の制定・変更によりペット飼育規則の条項を規約に設ける場合、特別決議に加え、既存のペット飼育者に対し「特別の影響を及ぼす」(区分所有法第31条後段)として、既存の飼育者全員の承諾を得る必要があるのでしょうか。 

この問題については、参考となる裁判例(東京高裁平成6年8月4日判決)があります。この事件は、入居案内と旧規約で、「動物の飼育はトラブルの最大の原因なので一応禁止する」旨の記載があるマンションにおいて、新たにペットの飼育を一律に禁止する規約を新たに設けたところ、既存のペット飼育者(イングリッシュビーグルを飼育)していた区分所有者から、規約の変更に承諾をしておらず無効であるとの主張がされ、裁判となりました。 

裁判所は、ペットの飼育を一律に禁止し、例外的措置については管理組合総会の議決により個別的に対応するということは合理的な対処の方法であり、既存のペット飼育者に「特別の影響を及ぼす」とは言えないとして、既存のペット飼育者の承諾を得なくても規約変更は有効であるとの判断をしました。 

この判決では、入居案内と旧規約でも一応禁止の文言が存在していたことや、例外的に総会の議決により飼育が認められることなどを考慮して、規約は有効とされてます。しかし、この判決は平成9年のものですが、現在のマンションの性能の向上等によって、ペット飼育に耐えうる環境が整備されているなど、当時とは状況が異なるところもあり、現在において同様の判決がされるかは不明です。場合によっては、既存のペット飼育者の承諾がなければ規約の制定や変更は認められないとの判断も十分あり得るところであり、規約の制定変更を行う際には注意が必要となります。 

6 弁護士への相談の必要性 

 このように、ペット飼育規則の制定にあたっては、規則の内容の吟味、必要となる手続、ペット飼育者への配慮など、検討しなければならないことが多くあり、場合によっては規則の無効が区分所有者から主張されるなど、大きなトラブルに発展し、理事会の責任問題となってしまうこともあります。そこで、マンション管理に詳しい弁護士にぜひ一度ご相談されることを強くおすすめします。