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マンション管理規約の変更:必要性と法的要件【弁護士が解説】 

2025.01.18

マンションにお住まいの方にとって、「マンション管理規約」は共同生活の重要なルールブックです。 

この規約は変更される場合があり、その場合居住者の生活に大きな影響を与える可能性があります。そのため、変更手続には厳格なルールが存在します。この記事では、マンション管理規約変更の必要性、法的要件、トラブル事例、そして解決策まで、弁護士の視点から分かりやすく解説します。 

マンション管理規約の基礎知識 

1 マンション管理規約とは?その重要性 

マンション管理規約は、区分所有法に基づき作成されるマンションにおける共同生活のルールです。マンション内の秩序維持、資産価値の保全に不可欠で、区分所有者全員が遵守する義務があります。ペット飼育の可否、騒音、駐車場の使用ルールなど、多岐にわたる内容が規定されています。例えば、「ペット禁止」の規約があるマンションでペットを飼育すると、規約違反となり、是正を求められる可能性があります。 

2 区分所有法とマンション管理規約の関係性 

マンション管理は区分所有法に基づいて行われます。この法律はマンションの所有者間の権利義務関係を定めたもので、管理規約はこの法律の枠組み内で作成されます。区分所有法に反する規約は無効です。例えば、区分所有法で定められた議決権の割合を規約で変更することはできません。 

そこでマンション管理規約を作成・変更する場合、区分所有法に違反していないかどうかを慎重に確認しなければいけません。 

3 マンション管理規約違反の実例と罰則 

規約違反の代表的な例として、ペット飼育、騒音、駐車場トラブルが挙げられます。「ペット禁止」規約に反してペットを飼育した場合、他の居住者からの苦情や是正勧告、訴訟に発展するケースもあります。騒音問題(深夜の楽器演奏や大声での会話など)や駐車場トラブル(無断駐車や規約に反する車両の改造など)も同様です。規約違反には、規約違反金の徴収や共同施設の使用制限などの罰則が科される場合があります。 

4 マンション管理規約の変更手順と法的要件 

マンション管理規約の変更は、区分所有法や既存の管理規約に基づいた厳格な手続きが必要です。手順を誤ると変更自体が無効になる可能性があるため、弁護士等の専門家への相談も視野に入れ、慎重に進めることが重要です。 

5 マンション管理規約の特別決議と普通決議 

マンション総会の決議には、「特別決議」と「普通決議」の2種類の決議方法があります。変更内容の重要性によって、どちらの決議方法を採用するかが決まります。マンション管理規約の作成、変更など、区分所有者の権利義務に重大な影響を与える場合は、より厳格な「特別決議」(規約に別段の定めがない限り、集会に出席した区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数)が必要です。例えば、一方、「普通決議」(集会に出席した区分所有者及び議決権の過半数)は、共用部分の使用細則の変更など、日常的な事項に適用されます。 

6 マンション管理規約変更必要な手続き 

規約変更には、上記の議決要件のほかにも、以下のような手続きが必要となります。 

➀議案書の中で、変更内容、変更の理由、区分所有者への影響などを分かりやすく説明します。 

➁総招集通知を適切な方法で送付し、開催日時、場所、議題などを明確に伝えます。総会では、変更内容について十分な説明と質疑応答を行い、区分所有者の理解と合意を得ることが重要です。 

➂総会の議事内容、出席者、採決結果などを議事録に詳細に記録します。議事録は規約変更の法的有効性を証明する重要な書類です。 

7 マンション管理規約変更をめぐるトラブルと解決策 

規約変更をめぐっては、手続きの瑕疵による決議の無効、変更内容に関する合意形成の難航、変更後の規約の解釈をめぐる争いなどが発生する可能性があります。 

規約変更決議が無効となるケース 

➀手続きの瑕疵 

招集通知の不備、重要事項説明の不足、議決権数の誤りなど 

➁区分所有法違反 

区分所有者の権利を不当に制限する内容など 

➂信義則違反 

特定の区分所有者を不当に差別する内容など 

これらの問題を避けるためには、弁護士による法的アドバイスを受けることが重要です。 

8 マンション管理規約変更手続が問題となった事件 

 規約変更手続が問題となった有名な事件があります(東京高裁平成7年12月18日判決)。この事件では、マンションの規約変更の手続の瑕疵が問題となりました。 

 問題とされた決議は、議決権の算定方法を専有面積比から一組合員一票に変更する旨の規約改正を行うため、総会の招集通知を発送しましたが、その招集通知には、「規約・規則の改正の件」と記載されているのみでした。そこで、区分所有者の1人が、区分所有法第35条5項違反(規約を改正する場合は、集会の招集通知に議案の要領を記載することを要する)を主張し、総会決議の無効を裁判で訴えました。 

 裁判所は、議案の要領の通知が必要とされている趣旨は、区分所有者の権利に重要な影響を及ぼす事項を決議する場合には、区分所有者が予め十分な検討をした上で総会に臨むことができるようにするほか、総会に出席しない組合員も書面によって議決権を行使することができるようにし、もって議事の充実を図ろうとしたことにあるとした上で、かかる法の趣旨に照らせば、本件の議案の要領は、議案の内容を事前に把握し賛否を検討することが可能な程度の具体性のある記載があるとは到底いうことができないとした上で、この議案の要領の通知の欠缺は、組合員の適切な議決権行使を実質上困難ならしめるものというべきであって、これをもって軽微な瑕疵ということはできない、とりわけ、本件改正は、組合員の議決権の内容を大幅に変更し、複数の票数を有していた組合員に極めて大きな不利益を課すことになる制度改革であるから、事前に各組合員に右改正案の具体的内容を周知徹底させて議決権を行使する機会を与えるように特に配慮することが必要であるとして、重大な違反があり、無効と判断しました。 

 この事件のように、規約の改正に当たっては、議案書の段階から、十分にその内容(規約改正の内容、規約改正によりどのような権利が制限されるか、権利の制限によって一部の区分所有者に特別の影響が生じないか、規約改正の内容が議案の要領に十分に記載されているか)を吟味する必要があります。 

9 マンション管理規約の変更について専門家への相談の重要性 

規約変更は、マンションにおける重要な意思決定です。変更に伴うトラブルは、マンション全体のコミュニティに悪影響を及ぼす可能性があります。トラブルを未然に防ぎ、スムーズな規約変更を実現するためには、区分所有法、マンション管理規約、そして変更手続きに関する正しい知識が必要です。「マンション管理 規約 弁護士」で検索し、専門家である弁護士に相談することで、法的リスクを最小限に抑え、円滑な規約変更を実現できます。早めの相談が、マンションの良好な管理運営につながります。