新規相談専用電話番号

050-5434-8042

受付:9:30〜20:00

共同親権の法改正、実際どうなの? 

2025.01.22

「離婚後も子どもにとってより良い環境を維持するため、自らが親権者となりたい」、「親権を取るためにはどうしたらいいのか?」、「これから施行される共同親権って実際どうなの?」など、離婚を検討している方で、親権について悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 

2026年5月施行予定の共同親権導入を前に、共同親権の理解には現在の親権制度の理解が不可欠となることから、現在の親権制度を確認した上で、新たに導入される共同親権制度がどのようなものかついて、離婚や親権の問題に詳しい弁護士が分かりやすく解説します。 

1 現在の親権制度 

  1.  そもそも親権とは? 

 親権とは、親が未成年の子を、健全な社会人にするために監護教育する権利及び義務のことです。親権の具体的な内容は、➀子の身上を保護・監督し、子を教育して精神的発達を図る監護養育の権利義務(身上監護権)と、➁子が財産を有するときに、これを管理し、また、子の財産上の法律行為について子を代理し又は子に同意を与え、子の財産を維持管理する義務(財産管理権)に分けられます。 

 たとえば、子が病気や怪我をした場合に、子に必要な医療を受けさせることは、子を保護し、監護することですから、親権の内容です。現在、医療の現場では、必要な情報を患者や家族に提供して、手術などの治療方針を患者の意思に基づき決定するという「インフォームドコンセント」が行われていますが、未成年の子のうち同意能力がない場合には、この同意をする権限は親権者が行うことになります。 また、進学や留学などの進路を決定するに当たっても、親権者が未成年の子を代理し、同意を与えることになります。 

  1.  親権者となる者 

➀父母が婚姻中の場合 

 婚姻中の父母は同時に親権者になり、しかも、共同で親権者となるのが原則です。 

➁父母が離婚する場合 

 未成年者の子がいる父母が離婚する場合は、父母のいずれかの単独親権になります。協議離婚の場合は離婚後の親権者を誰にするか合意する必要があります。 

 親権をめぐる紛争で多いのは父母が離婚する際の親権者指定です。父母が離婚するときは親権をめぐって合意することができなければ、離婚調停の申立や離婚訴訟の提起をして、調停による合意、離婚訴訟における判決や和解で親権者を定めなければなりません。 

  1.  親権の行使方法 

➀共同親権の場合 

 婚姻している父母ら共同親権者は、未成年の子に対する監護教育と財産の管理処分について、共同して決める必要があります。しかし、すべてのことを共同名義で行う必要はなく、他方の同意を得た上で、父母の一方の単独名義で行うことも可能です。また、その同意は黙示のものであってもよいとされています。 

 他方の同意を得ずに父母の共同名義で代理行為をしたときは、相手方が悪意(同意を得ていないことを知っていること)でない限り、その代理行為の効力は生じます。これに対して、父母のいずれかの単独名義で代理行為をしたときは無権代理行為となりますが、他方の親権者の追認により有効になります。 

 父母の意見が一致しない場合に、これをどのように解決するかについては、民法に明示の規定は存在していません。 

➁共同親権者の一方が親権を行うことができないとき 

 婚姻中の父母の一方が親権を行うことができないときは、他方が単独で親権を行使することができます。これには事実上のものと法律上のものがあります。 

 事実上のものとしては、長期の旅行、所在不明、重篤な病気、刑事施設への収容(服役)等があります。また、父母の婚姻関係が破綻し、別居状態にある場合についても、親権の単独行使を認める場合があります。しかし、夫婦である父母が別居しているだけで親権の共同行使が不能となるとするのではなく、緊急性、必要性、子の利益等を考慮に入れて、事案に応じて判断されます。 

 法律上のものとしては、後見開始決定を受けたときなどがあります。 

  1.  監護者指定について 

親権者の指定は父母が離婚する際に必要となりますが、離婚の前において、監護者(身上監護を行う者)を定める場合があります。多くは、父母が別居してから離婚するまでの間の子の監護者を定めることを裁判所に求めるものです。この場合、子が相手方の下で生活しているときは、子の引渡し事件とあわせて申立がされる場合が多いです。 

別居中の父母の間で子の監護者の指定をめぐって争いが起こったときは、家庭裁判所が審判によって監護者を指定しますが、これは別居解消又は離婚までの暫定的なものです。しかし、その判断は、父母のいずれに監護されるのが子の福祉にかなうかということを基準にするため、離婚の際の親権者指定の判断とほぼ重なるため、離婚時の親権者指定の争いの前哨戦という性格を帯びることになります。つまり、離婚前であっても、裁判所が監護者を指定した場合、離婚時にはそのままその監護者が親権者に指定されることがほとんどであるということです(もちろん、離婚時に子の生活環境が大きく変化する等により別の結果となる場合もあります)。 

  1.  親権者・監護者の適格性の判断基準について 

➀適格性の判断について 

  

親権者の決定は、子の利益及び子の福祉を基準として決定されなければなりません。子の利益及び子の福祉というのは、父母のいずれを親権者(監護者)とすれば、子が健全に成長できるか、子にとってふさわしいかということです。 

家庭裁判所で親権・監護権が争われる場合、その適格性については、父母側の要素と子側の要素が総合的に考慮され決定されます。父母側の要素としては、父母の年齢、性格、健康状態、監護意欲、これまでの監護養育状況(監護能力)、子に対する愛情の程度、生活状況(職業、試算や収入等の経済状況、生活態度等)、居住環境、教育環境、親族の経済面を含めた監護に対する支援体制等があります。 

子側の要素としては、子の年齢、性別、心身の発育状況、現在の生活環境等への適応状況、生活環境等の変化への適応性、子の意思、きょうだい関係、子と父母及び親族との情緒的結びつき等があります。 

➁判断の基準について 

 家庭裁判所では、上記要素判断において、以下の基準を用いて判断を行います。そこで、親権や監護権を主張する場合、これらの基準に沿う形で主張を行うことが重要となります。 

ア 母性優先の基準 

  

 母性優先とは、乳幼児については、特段の事情がない限り、母の看護養育に委ねることが子の福祉に合致するという考え方です。子の発達段階を考えると、乳幼児期には、母の存在が情緒的成熟のために不可欠であって、スキンシップを含めて母の受容的で細やかな愛情が必要であるということがその根拠にあります。 

 もっとも、最近では、単に生物学上の母という事情だけではなく、看護養育状況を観察して、母性的な役割を持つ監護者との関係を重視すべきことが指摘されており、「母親優先の基準」ではなく、「母性優先の原則」や、「主たる監護者の原則」などと言われるようになりました。 

 現在、乳幼児の監護養育は、子育てに対する父母の役割分担意識に大きな変化があり、その考え方も多様化しています。たとえば、母親が仕事や遊興等で自宅にいる機会が少ない一方で、父親が主夫として子が生まれたときから、母親に代わって育児を継続的・長期的に行っていた場合、たとえ子が乳幼児であっても、親権者・監護者の決定において、母性優先の基準により、主たる育児者である父親が親権者・監護者に指定されるということは十分にあり得ることになります。もっとも、この基準のみで判断がされるわけではなく、子の精神的、情緒的な結びつきの慎重な観察や、他の基準とあわせて判断されることになります。母性優先の基準は、重要な基準ではあるものの、親権者の適格性を判断するあくまで1つの基準です。 

イ 継続性の基準 

 子の健全な成長のためには親子の不断の精神的結びつきが重要となりますが、監護者の変更によりこの結びつきが断絶されることになり、それは子への精神的負担となります。また、監護者の変更は、子の生活環境を変化させ、子の社会的つながり(保育園、学校との関係、近所の遊び友達など)が断絶してしまいかねません。 

 そこで、現状の監護者の監護養育環境が安定しており、子が生活環境にも適応している場合、これを重視することになります。これを継続性の基準といいます。 

 継続性については、出生時から監護者との結びつきを重視する「監護者との継続性」と、これまでの生活環境等との結びつきを重視する「監護環境の継続性」があります。子が乳幼児であれば、監護親との結びつきが重要であるため、子の出生時からの監護養育状況を検討することになります。これに対して、小学校の中学年以上になれば、地域や友人などとのつながりが強くなるので、「監護環境の継続性」の要素を重視することになります。 

 なお、この基準を重視すると、実力による子の奪い合いの結果を追認することになりかねないとの指摘があります。そこで、子の奪取があったと認められるときには、継続性の基準の適用については慎重になされます。 

ウ 子の意思尊重の基準 

 子の監護者の指定又は親権者の指定について裁判をするに当たっては、子の年齢が15歳以上の場合は、その子の陳述を聴取しなければならないとされています。 

 また、子の年齢が15歳未満の場合であっても、その子の意思を把握するように努め、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を尊重しながら判断をするように求められています。 

 子の親権者または監護者を決めるのは、あくまで子の利益及び福祉のためですから、子が自ら意思を表明できる場合、子の意思を尊重すべきです。 

 子の意思を表明できる能力については、おおむね10歳以上を一応の基準としています。 

エ きょうだい不分離の原則 

 きょうだいがいる場合、きょうだいの親権者を父母で分離するばきではないという考え方です。 

 これは、きょうだいが共に生活することによって、得られる体験が人格形成上貴重であるということ、両親の離婚・別居に伴って、きょうだいを分離すると、子は父母のみならず、きょうだいとも離別することになり、二重の心理的負担を強いられることに対する配慮です。 

 ただし、きょうだい不分離の基準は、他の基準と比べると重要な基準ではなく、例えば、きょうだいが分離して生活している状況が相当期間継続しているときや、子の年齢、子の意向などから、きょうだいの親権者を父母で分離することは少なくありません。 

オ 面会交流の許容の基準 

 母又は父が親権者になった場合、子ともう一方の親との面会交流を認めるなどして、子に対してもう一方の親の存在を肯定的に伝えることができることを面会交流の許容性といいます。この点を重視するのが、面会交流の許容の基準です。 

 離婚等により父母の一方により監護養育されている子にとって、他方の親との交流により、非監護親やきょうだいの存在を知り、良好な関係を保つことが、子の人格形成にとって重要であることは争いがありません。 

 離婚における親権者の指定が争われる場合、両親が別居していることが多いですが、この場合、面会交流許容の基準によれば、別居中の面会交流の状況等を検討し、面会交流が適切に行われていることを監護親に有利な要素とし、面会交流を拒否している状況があれば、親権者の指定にあたって監護親とって不利な要素となります。 

 もっとも、監護親が面会交流について、拒否し、あるいは消極的であったとして、これだけで直ちに非監護親を親権者に定めるといったことはあまりありません。あくまで他の要素も検討しながら慎重に親権者の指定について判断がなされることになります。 

カ 違法な監護の開始 

 両親が別居して、一方の親が一定期間安定的に子を監護養育しているときに、他方の親が子を無理矢理連れ去れば、子の安定した生活を実力で変更し不安定にさせるという子の福祉反する違法な行為をしたということになり、そのような行為に及んだ親は親権者としての適格性に問題があるとうことになります。 

 また、子の監護養育状況がたとえ安定していたとしても、それが子を連れ去ることにより生み出されたときは、現在の監護養育状況が安定していることを理由に子を連れ去った親を親権者とすることは、連れ去りという違法行為を裁判所が追認することになり、これは子の連れ去りを助長することになりかねません。 

 そこで、監護親に子の連れ去りなどの違法な監護の開始があったときには、このことが親権者の指定の判断要素とされます。 

  もっとも、監護開始の違法性は重要な要素ではあるものの、これよりも子の福祉が優先されることから、監護開始の違法性の程度と他の要素をあわせて、親権者の指定が判断されることになります。そのため、監護開始の違法性があったとしても、それまでの子の監護養育に問題があるような場合には、現に監護している親を親権者・監護者に指定することもあり得ます。 

  1.  別居と連れ去りの問題 

別居に際し、子を連れて行くことがあり、その結果、子はこれまでと異なる環境の下で生活することになります。このような場合、他方の親の同意を得ずに子を連れて行くことがほとんどです。 

この場合、子の連れ去りをしたことになるか、という難しい問題があります。 

例えば、母親が父親の同意を得ずに子を連れて別居をした場合、裁判上は、別居前の主たる監護者が母であれば、違法な監護の開始とは認められないか、違法な監護の開始とは認めながらも違法性の程度が低いとされてははの監護養育の継続性が認められ、母が親権者または監護者とされることが多いようです(大阪高決平成17年6月22日)。 

他方で、母が何らかの事情で子を父の下に残して別居したときには、別居前の主たる監護者が母であったとしても、父が別居後、一定の期間監護養育をしており、子の生活状況も落ち着き安定しているならば、父の監護養育の継続性が認められるとして、父が親権者または監護者とされることがあります。実際、別居時まで主たる監護者ではなかった父親が親権者または監護者に指定されるケースではこのような状況が背後にあることが多いです。 

主たる監護者が子を残して別居した後、自らが子の親権者または監護者になることを希望する場合、時間の経過が結論を大きく左右するため、早期に子の監護者指定と子の引渡しの審判申立を行う必要があります。 

  1.  親の経済状態と親権者・監護者指定について 

 親権者・監護者の指定にあたって、親の経済状態とどのように考慮すべきかという問題があります。 

 この点については、一般的には重要な要素にはならないとされています。なぜなら、母親の収入は通常父親の収入よりも低い場合が多いですが、母親が親権者となった場合、父親から支払われる養育費や児童扶養手当等の公的援助があり、また、離婚に伴う財産分与や慰謝料などの給付、親族からの援助等があり得るからです。 

  1.  実際の親権者・監護者指定の判断の難しさ 

 離婚や別居にあたって親権者・監護者の指定が争われる場合、以上の基準に基づいて判断がされることになりますが、実際の判断を行うにあたっては、とても難しい検討を迫られることが多いです。 

 例えば、ある事件では、母が当時3歳、6歳の子二人を連れて一度は別居をしたものの、その後、父から、違法な連れ去りであり警察に通報するなどと言われ、結局父に子を引渡し、そのまま1年以上に渡って、父がこれまで子が暮らしていた自宅において子二人を監護養育し、その間父による監護養育には特に大きな問題がなかったという状況で、母から子の引渡しと監護者指定の審判・保全処分が申し立てられました。 

裁判所が子二人の監護者を父母のいずれにすべきかの判断をすることになりましたが、裁判所は、継続性の基準からは、父の下で1年以上子が安定的に養育されていること、また、別居の経緯においても、一度は母が子二人を連れて家を出ているものの、その後父に引き渡していること(但し、引渡しの経緯を見れば、母が子を引き渡したのは不本意な部分があり、決して父に子の養育を任せたとまでは言い切れないとしました)などの状況はあるものの、一方で、これまで母が専業主婦、あるいはそれに近い形で主として子二人の養育を継続的に行い、他方で父は転勤が多く子二人と離れて暮らしていた時期もあったことから、母性優先の基準、これまでの子の監護養育状況から、母親による監護を行うことが子二人にとって望ましいとし、結論として、母を監護者と指定し、父に対し母への子の引渡しを命じました。その後、父母は離婚しましたが、母が親権者と指定されました。 

 このように、実際の親権者、監護者をめぐる争いは非常に難しい判断を要求されるものであり、裁判において的確な主張立証を尽くす必要があります。また、別居に伴い一方の親が子の監護を開始する場合、子の監護をしていない親が親権者や監護者の指定を望むのであれば、大至急子の引渡しと子の監護者指定の審判、保全処分の申立を行う必要があり、まさに時間との勝負になります。 

そこで、離婚や別居に伴い、親権者、監護者となることを希望する場合、早急に親権に詳しい弁護士に相談されることを強くお勧めします。 

2 共同親権の制度について 

  1.  共同親権制度 

民法が改正され、2026年5月から新たに共同親権の制度が導入される予定です。 

 現行制度は、父母の婚姻中はその双方を親権者とする一方で、父母の離婚後は必ずその一方のみを親権者と定めなければならないとしていましたが、改正法を見直し、父母の離婚後も、その双方を親権者とすることができることとしました(改正後民法第819条)。 

改正法では、まず、父母が協議離婚をするときは、父母の協議で、その双方又は一方を親権者と定めることとし、その協議が調わなければ、裁判所が、子の利益を考慮して、父母の双方又は一方を親権者と定めることになります。 

 改正法は、裁判所が離婚後の親権者を判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係や父母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないとした上で、「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」は、裁判所は必ず父母の一方を親権者と定めなければならないこととし、その具体的な場合として、➀父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるときと、➁父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、親権者の定め得についての協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときがあることを例示しています。 

 また、協議離婚の際に、DVなどを背景とする不適切な形での合意によって親権者の定めがされた場合には、子にとって不利益となるおそれがあるため、それを是正する必要があります。改正法は、こうした場合にも対応することができるよう、家庭裁判所の手続による親権者の変更の際に家庭裁判所が父母の協議の経過(例えば、父母の一方から他の一方への暴力の有無、家庭裁判所による調停の有無など)その他の事情を考慮すべきこととしています。 

  

  1.  共同親権制度の下での親権行使について 

  

現行の制度では、父母の婚姻中、父母双方が親権者である場合 

父母が共同して親権を行うとしていますが、親権を単独で行える範囲が不明確であり、また、父母の意見対立を調整する手続が存在しません。 

 改正法は、父母双方が親権者である場合においても、「子の利益のため急迫の事情があるとき」(改正後民法第824条の2第1項3号)や「監護及び教育に関する日常の行為」(同条2項)をするときは、親権の単独行使が可能であることを明確化しました。 

 「子の利益のため急迫の事情があるとき」とは、「父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては、適時に親権を行使することができず、その結果として、子の利益を害するおそれがあるような場合」といい、これに該当する場合としては、例えば、入学試験の結果発表後の入学手続のように一定の期限までに親権を行うことが必須であるような場合、DVや虐待からの避難が必要である場合、緊急の医療行為を受ける必要がある場合などが考えられます。 

 「監護及び教育に関する日常の行為」とは、「日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないもの」を指しており、例えば、子の心身に重大な影響を与えないような医療行為や通常のワクチン接種、習い事、高校生が放課後にアルバイトをすることの許可などは、基本的には「日常の行為」の範囲内と考えられます。 

 他方で、子の進路に影響するような進学先の選択や入学の手続、高校に進学せずに又は高校を中退して就職すること、子の転居、子の心身に重大な影響を与える医療行為については、「日常の行為」には該当しないと考えられます。 

 また、父母双方が共同で親権を行うべき事項についての父母の意見対立に対応するため、家庭裁判所が、父母の一方を当該事項についての親権行使者と定めることができる手続を新設しました。 

3 監護についての定め 

現行制度では、父母の離婚後に親権者の定めとは別に、監護者の定めその他子の監護について必要な事項を定めることができるとしていますが、監護の分担については規定が存在しません。 

そこで改正法では、父母の離婚後の子の監護について監護の分担の定めをすることができることを明確化しました(改正後民法第766条1項)。監護の分担とは、子の監護を父母が分担することであり、例えば、子の監護を担当する期間を分担することや、監護に関する事項の一部(例えば、教育に関する事項など)を父母の一方に委ねることがこれに該当すると考えられます。 

 また、現行制度では、監護者が定められた場合における親権者と監護者の権利義務の内容を定める規定が存在しません。 

 改正法は、監護者を定めた場合における監護者の権利義務の内容を明確化するとしています。監護者以外の親権者は、監護者が行う該当行為を妨げてはならないとされます。 

 改正法において(監護者以外の)親権者が監護者による監護教育を妨げてはならないとしているのは、監護者以外の親権者の行為と監護者の行為が抵触する場合の優先関係を明らかにする趣旨です。そのため、監護者の定めがされた場合であっても、監護者以外の親権者は、その親権に基づき、財産管理権を行使することができ、また、監護者による監護教育を妨げない範囲で、監護及び教育に関する日常の行為をすることができます。 

4 共同親権制度の導入により予想されること 

  1.  親権者の指定についての選択肢の増加 

 離婚の際、共同親権という選択肢が増えるため、共同親権を選択した場合の離婚後の子の監護養育について、十分な検討が求められることになります。 

 例えば、協議離婚をする場合で共同親権を選択するとした場合、離婚協議書の内容として、親権者間の役割分担を明確にしておかないと離婚後にもトラブルが生じる可能性があります。 教育方針、医療、習い事など、具体的な事項について誰が主導権を持つのか、また、子の進学、転居などはどのような方法で決定するのかなどを、事前にしっかりと話し合い、明確に決めておくことが重要です。 

  1.  監護者指定をめぐる争い 

 共同親権制度によって、離婚する父母双方が親権者となったとしても、実際に子を監護するのは、子と同居する親となります。そこで、監護者指定をめぐって争いとなることが予想され、共同親権の下での監護者指定が特に重要な意味合いを持つことになります。監護者指定が申し立てられた場合には、基本的には現行制度での監護者指定を判断する場合の基準に従った判断がされることになると考えられます。 

離婚後共同親権と定められた場合に、親権者の一方を監護者に指定することで、子が父母のいずれかの下で監護教育を受けるかが明確となります。共同親権の下で、子がどちらの親と同居するかについて意見が対立した場合には、同居を望む一方からの監護者指定の申立が想定されますが、居所指定権について単独での親権行使の定めを求める方法もあります。 

5 おわりに 

 共同親権制度によって、協議離婚において共同親権を選ぶ場合における父母の真摯かつ慎重な合意の確保、とりわけDVや子への虐待等の深刻な状況に配慮し、紛争性の高い状況で共同親権または単独親権の合意を形成することが必要となります。これはとても困難な状況が予想される場合があり、弁護士や家庭裁判所の関与がこれまで以上に必須となる場面が増加すると予想されます。 

また、共同親権は、子どもにとって大きな影響を与える可能性があります。子どもの福祉を最優先に考え、冷静に検討することが大切です。 

## キーワード: 離婚 共同親権 法改正  共同親権 離婚協議書 共同親権 調停 共同親権 審判 共同親権 法改正 いつから 共同親権 法改正 経過措置 共同親権 養育費 面会交流