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マンションの管理費滞納を防ぐ対策と滞納管理費を回収する方法を解説

2024.01.30

マンションの管理費用は、マンションの日常管理に使われるお金ですので、マンションを維持管理していくにあたって必要不可欠なお金です。このような管理費用は、マンション管理組合が徴収・管理していくことになりますが、区分所有者による管理費の滞納で悩まれている方も多いと思います。

マンション管理費用の滞納を放置していると、時効などのリスクがありますので早めに対応することが大切です。

今回は、マンション管理組合に向けて、マンションの管理費滞納を防ぐための対策と滞納管理費を回収する方法について解説します。

1、マンションの管理費とは

マンションの管理費とは、マンションの敷地および共用部分などの維持管理のために恒常的に支出される費用をいいます。このようなマンション管理費は、区分所有者が支払い義務を負っています。

マンション管理費用に滞納があると共用部分の維持管理が困難になるなどの事態が生じてしまいますので、マンション管理組合としては適切に対応することが求められます。

2、マンションの滞納管理費を回収する方法

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管理費を滞納している区分所有者がいる場合には、以下のような方法により滞納管理費を回収します。

(1)滞納者との交渉

マンションの管理費の滞納が発生した場合、マンション管理組合や管理会社から滞納者に対して、滞納管理費を支払うよう催告を行います。

催告の方法としては、電話、自宅への訪問、書面などが考えられます。滞納者と連絡が取れない場合や支払意思を示さない場合には、配達証明付きの内容証明郵便を利用して支払いの催告を行うとよいでしょう。

(2)支払督促、少額訴訟、通常訴訟

滞納者が任意に滞納管理費の支払いに応じない場合は、法的手段により滞納管理費の回収を図ります。滞納管理費を回収するための法的手続きには、以下のような3つの方法が考えられます。

①支払督促

支払督促とは、債権者からの申立てに基づき、書類審査のみで債務者に対して金銭の支払いを命じる手続きです。マンション管理費の滞納は、金銭の支払いに関する事件ですので、支払督促を利用することができます。

債務者からの異議がなければ仮執行宣言付き支払督促により強制執行が可能になります。

②少額訴訟

少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に限り利用できる特別な訴訟手続きです。原則1回の審理のみで判決が言い渡されますので、簡易かつ迅速な手続きといえます。

マンション管理費の滞納額が60万円以下であれば、少額訴訟を検討してみてもよいでしょう。

③通常訴訟

管理費の滞納に関して争いがある事案では、支払督促や少額訴訟だと異議の申し立てがなされる可能性があります。その場合は、通常訴訟の手続きに移行してしまいますので、最初から通常訴訟を提起することもあります。

通常の訴訟手続きでは、証拠に基づき事実認定を行う必要がありますので、判決が出るまでに半年から1年程度の期間がかかることもあります。

(3)強制執行

上記のような裁判手続きによっても、滞納者が管理費の支払いに応じない場合には、以下のような強制執行の手続きを行います。

①債務名義に基づく差押え

支払督促、少額訴訟、通常訴訟により債務名義(確定判決など)を取得すれば、債務名義に基づいて、滞納者の財産を差押えることができます。差押えの対象としては、滞納者の給料、預貯金、マンションの区分所有権などが考えられます。

ただし、マンションの区分所有権に抵当権が設定されて、剰余価値がない場合は、競売手続きが無剰余により取り消される可能性もありますので注意が必要です。

②区分所有法7条の先取特権に基づく物上代位

区分所有法7条の先取特権に基づく物上代位により、滞納者の区分所有権や建物に備え付けた動産の売却代金などから滞納している管理費の回収を図ることができます。

区分所有法7条の先取特権に基づく物上代位では、権利行使にあたって債務名義を取得する必要がないというメリットがあります。

③区分所有法59条に基づく競売請求

マンション管理費の滞納により、共同利益に反し、共同生活上の著しい支障が生じる場合には、区分所有法59条に基づく競売請求を行うことができます。

区分所有法59条に基づく競売は、一般的な競売とは異なり、区分所有者から区分所有権を剥奪することを目的としていますので、無剰余であったとしても競売手続きは取り消されることはありません。

3、マンションの管理費滞納を防ぐための対策

区分所有者によるマンション管理費の対応を防ぐためには、以下のような対策が必要になります。

(1)管理費の徴収方法を口座振替にする

マンション管理費の徴収方法を区分所有者による指定口座への振り込みにしていると、期限までに支払いすることを忘れて管理費の滞納が生じる可能性が高くなります。

そのため、管理費の徴収方法は、口座振替にするのがおすすめです。口座振替にすることで区分所有者の時間的負担を軽減し、支払い手続きの煩わしさを回避できるなど区分所有者にとってもメリットがありますので、徴収方法の変更に応じてもらいやすいでしょう。

(2)マンション管理規約の見直し

マンションの管理規約を見直すことも管理費滞納を防止する対策としては有効です。たとえば、滞納が発生した場合の遅延損害金を定めておくことで一種の抑止力になりますので、区分所有者による滞納を防ぐ効果が期待できます。また、滞納管理費の請求に要した弁護士費用を違約金として管理費の滞納者に負担させる旨の定めをすることも考えられます。

(3)管理費の必要性を周知

マンションの管理費が何に使われているのかをよく理解していないことにより、安易に管理費の滞納をしてしまうケースもあります。このようなケースでは、管理費の必要性や重要性などを区分所有者にしっかりと説明することで、管理費の滞納を防ぐことができるでしょう。

4、滞納管理費がある場合の注意点

マンションの管理費滞納が発生している場合には、以下の点に注意が必要です。

(1)マンション管理費の時効

マンションの管理費を請求する権利は、毎月の支払い期日から5年を経過すると時効により消滅してしまいます。時効により権利が消滅してしまうと、滞納者に対して管理費の請求ができなくなりますので、管理組合としては、適切な債権管理が求められます。

長期間管理費を滞納している人がいる場合には、遅くとも4年目に入った時点で請求などの法的手続きをとり、時効の更新をする必要があります。

(2)氏名の公表は名誉毀損にあたるリスクがある

マンションの管理費を滞納する区分所有者への対する対処として、マンション内の掲示板に滞納者の氏名を公表するなどの措置をとるケースがあります。

しかし、管理費の滞納者の氏名を公表することは、当該滞納者への名誉毀損につながるリスクがあります。事前の通知もなしにいきなり滞納者の氏名を公表することは違法と評価される可能性も少なくありませんので、慎重な手続きをとる必要があります。

(3)訴訟その他の法的措置を行うには手続が必要

区分所有法には「管理者は、『規約』または集会の決議により・・・原告または被告となることができる」という規定(26条4項)があります。これを受け、規約で、理事会の決議があれば理事長が訴訟追行できる(=総会の決議は不要)としていることもあります。このように、訴訟その他の法的措置を行うには総会又は理事会の決議が必要となります。

5、まとめ

マンション管理費用の滞納が発生した場合には、時効の問題もありますので、早期に対応する必要があります。滞納者が任意に支払いに応じてくれない場合には、法的手続きが必要になりますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

マンション管理費用の滞納でお困りの管理組合の代表者および担当者の方は、弁護士法人日栄法律事務所までお気軽にご相談ください。